人物
カール・フォン・コーゼル(Carl von Cosel、本名: ゲオルク・カール・タンツラー)とは、1930年代のアメリカ・フロリダ州キーウェストにおいて、結核で亡くなった最愛の若き女性の遺体を墓地から盗み出し、約7年間にわたって自宅で実質的な同居生活を続けていたという、犯罪史・精神医学史において最も異様で衝撃的な死体損壊・不法占拠事件の当事者(元放射線技師)です。
自らを伯爵一族の「フォン・コーゼル」と名乗っていた彼は、勤務先の病院で出会い一目惚れしたキューバ系アメリカ人女性、エレナ・オヨスが逝去した後にその遺体を墓から奪取。腐敗していく遺体を維持するため、骨組みをワイヤーで補強し、皮膚の代わりに絹の布や蝋(ワックス)を塗り、ガラスの義眼を嵌め、香水や防腐剤を大量に使用して修復を続けながら、自宅のベッドに寝かせていました。1940年に遺族の不審感から事件が発覚し逮捕されましたが、当時の社会(民衆)からは猟奇的な犯罪者としてだけでなく、「死を超越した究極の純愛」として歪んだ同情や狂信的な関心を集めたことでも知られます。精神医学の文脈においては、遺体に異常な性執着を抱く「ネクロフィリア(死体愛好)」の極端な臨床事例や、強い喪失ストレスから生じる精神記述モデルとして、今なお世界的に議論され続けている人物です。
7年間の同居生活、逮捕の経緯と孤独な晩年
1931年に最愛のエレナ・オヨスを結核で亡くしたカール・フォン・コーゼルは、彼女の死を受け入れることができず、1933年に墓地から遺体を盗み出しました。ここから、歴史上最も猟奇的とされる約7年間に及ぶ死体との同居生活が始まります。
コーゼルは自宅に持ち帰った遺体の崩壊を防ぐため、骨組みをワイヤーやハンガーで繋ぎ止め、腐敗した皮膚の代わりにワックスとシルクの布を貼り付け、ガラスの義眼を嵌めました。衣服や大量の香水、防腐剤を購入する彼の奇妙な行動や噂から、1940年にエレナの姉が自宅を訪ねて遺体を発見し、警察に通報したことで事件が発覚・逮捕されました。しかし、裁判では「公訴時効(当時の死体損壊等の時効は2年)」が成立していたため、コーゼルは処罰されることなく釈放されました。釈放後の晩年はフロリダ州の別の街へ移住し、エレナの顔から型を取った等身大の蝋人形(マスク)を制作し、それを新たな伴侶として扱いながら、1952年に75歳で孤独な死を迎えました。
「ネクロフィリア(死体愛好)」
カール・フォン・コーゼルの行動は、精神医学や臨床心理学の領域において、極端なネクロフィリア(死体愛好、死体性愛)の記述モデル、または深刻な妄想障害の事例として世界的に知られています。
ネクロフィリアとは、生きた人間ではなく「死体」に対して異常な愛着、執着、あるいは性的な欲望を抱く精神医学上の性嗜好(パラフィリア)の一種です。事件発覚当時、地元メディアや民衆の一部は彼を「死をも超越した純愛のロマンチスト」と好意的に捉える歪んだ風潮もありましたが、1972年になり、当時の遺体解剖を担当した複数の医師が「エレナの遺体の陰部に性交渉を可能にするためのペーパーチューブ(紙筒)が挿入されていた」という戦慄のファクトを証言しました。この証言の実証性を巡っては「当時の公判記録にない」「30年以上経ってからの告発である」として疑問視する専門家も一部に存在しますが、いずれにせよ、喪失の恐怖から生じた強固な現実逃避(妄想)が、生命なき物質(遺体)を人間として認知し続ける異常行動の境界線を暴いた歴史的事例となっています。
日本で特集・放送された主なテレビ番組
この世界を震撼させた猟奇事件は、日本の主要な実録ドキュメンタリー・バラエティ番組において「死を超越した究極のラブストーリー」あるいは「戦慄のミステリー」として度々特集・放送され、国内でも大きな反響を呼びました。
特に広く知られているのが、フジテレビ系列の長寿番組『奇跡体験!アンビリバボー』での特集(「エレナ 究極のラブストーリー」などのタイトルで放送)です。番組内では、映像作家の長江俊和氏らが演出を手がけ、コーゼルがエレナに捧げた盲目的な情熱をドラマチックな純愛仕立ての再現VTRとして構成。しかし、番組の最後に、コーゼルが実際にワックスや絹布、針金を用いて生々しく修復し続けた「エレナの遺体の実物写真」がテロップとともに公開され、その凄惨なビジュアルのギャップが視聴者に強烈なトラウマと衝撃を与えたエピソードとして語り継がれています。また、日本テレビ系列の『ザ!世界仰天ニュース』など、他局の衝撃事件特番でも「美しすぎる遺体と暮らした男」といったテーマで度々取り上げられており、日本国内のポップカルチャーや猟奇犯罪史の記述モデルとしても極めて知名度の高い海外事件となっています。
カール・フォン・コーゼルの関連用語一覧
- エレナ・オヨス:1931年に結核により21歳の若さで亡くなった、キューバ系アメリカ人の女性。コーゼルに盲目的に愛され、死後に遺体を盗み出される事件の被害者となった。
- ネクロフィリア(死体愛好):精神医学や臨床心理学における性嗜好(パラフィリア)の一種。生きた人間ではなく死体に対して異様な愛着や性的な欲望を抱く精神状態。
- 公訴時効:犯罪行為が終わってから一定期間が経過すると起訴できなくなる法制度。コーゼルの死体損壊等の行為は発覚時に当時の時効(2年)を過ぎていたため、処罰を免れる原因となった。
- 奇跡体験!アンビリバボー:日本のフジテレビ系列で放送されているドキュメンタリー・バラエティ番組。コーゼルの事件を「究極の純愛」として描きつつ、最後に実物写真を公開して国内の視聴者に大きな衝撃を与えた。


