昔放送されていた「まんが日本昔ばなし」が好きでよく見ていました。今はYoutubeチャンネルが開設されており、今後見たことが無い話が放送されるかをかなり注目しています。
私が日本昔ばなしが好きな理由は、たまにある怖い話が子供向けとは思えない内容だからです。特に「とうせんぼう」、「カンタの枕」はトラウマ級でした。
しかしながらそれらマイナーなお話がオカルト的なのはわかりますが、実は有名な話も原作まで遡るとオカルト要素この上なしです。
今回は「カチカチ山」を紹介します。
日本昔ばなしのカチカチ山
日本昔ばなしで放送されているカチカチ山は大まかに下記のストーリー
むかしむかし、例のごとくおじいさんとおばあさんが住んでいました。おじいさん、おばあさんは畑で大根などの野菜を栽培していますが、近くの山に住む悪タヌキが畑を荒らしに来ます。
おじいさんは一計を案じ、タヌキをモチのようなもので捉えて、天井に縛ってつるします。そしてタヌキ汁にでもするかと脅します。タヌキは焦ってピンチです。おじいさんは汁にする気はないはずですが。
タヌキも一計を案じ、おじいさんが不在でおばあさんが麦を搗いている最中に、タヌキも手伝えば早いのではないかと?と簡単すぎる策でおばあさんを騙します。いやおばあさんの知恵のなさの方が際立つシーンでございます。
そして縄をほどかれたタヌキはしてやったりで、おばあさんを背後から襲い、殺してしまいます。タヌキが逃走するときに、おじいさんが帰宅。おばあさんの亡骸をみて悲しみにくれます。当然です。
これを聞きつけたウサギがおじいさんに同情し、タヌキ討伐を誓います。そしてウサギは
- タヌキの背中を燃やす
- 燃やした背中に薬を塗りつける
- 泥船で沈めて溺れさせる
おじいさんの仇を取ってめでたしめでたし?でしょうか。
現代版と原典のあらすじ比較
現代版と原作を比較してみますが、下記になります。
| 項目 | 現代一般的なストーリー | 原典(江戸時代の赤本など)のストーリー |
|---|---|---|
| タヌキの捕縛 | 畑を荒らす悪タヌキをおじいさんが捕まえ、家に縛り付ける。 | 畑を荒らす悪タヌキをおじいさんが捕まえ、汁にしようと縛り付ける。 |
| おばあさんの惨劇 | 騙されたおばあさんが縄をほどき、タヌキに襲われて殺される(または重傷)。 | 騙されたおばあさんが縄をほどき、タヌキに杵で打ち殺されてしまう。 |
| 原典特有の展開 | おじいさんが帰宅し、悲しみに暮れる。 | タヌキがおばあさんを調理して「ばばあ汁」を作り、おばあさんに化けておじいさんに食べさせる。 |
| ウサギの復讐 | 背中を燃やし、辛い薬を塗り、泥船で沈める。 | 背中を燃やし、辛い薬を塗り、泥船で沈めて仇を討つ。 |
原典の真の恐怖——「ばばあ汁」と間接的食人
おばあさんとタヌキの死者二人を出してしまう現代のカチカチ山ですが、元はこれをさらに超えます。
現代版ではおばあさんが害されるところで止まりますが、原典はここからが本当の恐怖です。縄を解かせたタヌキは、おばあさんを打ち殺すにとどまらず、その遺体を解体して鍋で煮込み、「おばあ汁(ばばあ汁)」と呼ばれる汁ものを作ります。
しかもタヌキは、おばあさんの姿に化けておじいさんの帰りを家で待ち構えます。畑仕事から帰ってきたおじいさんに対して「美味い汁ができた」と振る舞い、何も知らないおじいさんはそれを完食してしまうわけです。食べ終わった直後、タヌキは元の姿に戻り「おばあ汁食った、床の下の骨を見ろ」と嘲笑して山へ逃走。
おばあさんがタヌキに戻って驚いたおじいさんが床下を探すと、そこには本物のおばあさんの遺体が……という、もはや昔話ならぬ怪談です。策略とはいえ、愛する妻を口にしてしまったおじいさんのトラウマたるや絶望的で、タヌキは死んでも誰も悲しみはしないでしょう。
当然のことながら現代版でもおばあさんを殺していますので、タヌキが復讐され死んでも当然の展開でありますが、原作の方はもっとエグいのです。
コンプライアンスが厳しくなったなぁ
近年、昭和の名作アニメ『まんが日本昔ばなし』の公式YouTubeチャンネルが開設され、昔話ファンとしては実に嬉しい限りです。こちらの番組でも『カチカチ山』は見られますが、放送されているのはおばあさんが殺されるところまで。これでも十分怖いのですが、当時は1970年代から90年代にかけての放送ですから、現代に比べればまだまだコンプライアンスも緩やかな時代でした。
当時の『日本昔ばなし』をご存じの方ならお分かりでしょうが、『飯降山』や『とうせんぼう』、『吉作落とし』など、トラウマ級に不気味で後味の悪いオカルト回がたくさん存在してました。
原作は見てほしい
子供に見せる表現が優しくなること自体は悪いことではありません。しかし、世の中の自主規制が厳しくなりすぎる現状には、少し首を傾げたくもなります。
セクシービデオが一定の犯罪抑止になっているという説があるように、あまりに世の中から表現の「毒」を排除しすぎると、人間の内なる狂気や不満が溜まってしまうのではないとも思います。
漫画『グラップラー刃牙』の範馬勇次郎も「毒も喰らう・・・」と語っていますが、まさにそれと同じです。昔話や民話というのは、単なる綺麗な道徳劇ではなく、世の中の理不尽さや人間の業、禁忌(タブー)を学ぶ安全装置でもあったはずです。
毒の存在を知り、清濁併せ呑む感情の耐性を養うことこそが大切なのではないでしょうか。もちろん、知った毒を他人に喰らわせる(現実に悪用する)のは絶対に御法度ですが。
原作はオカルト的な面白さもありますので、オカルト好きな人には刺さるのではないかと思います。昔ばなしは怖い話が多いので検索するのも面白いですよ。
ただタヌキやウサギのような真似はしないでください(笑)。復讐もダメですヨ。


