【トラウマしかない】とうせんぼう。こんなものが放送されていたのか

歴史・伝説・奇談

今回は日本昔ばなし回です。

私の中で1位のトラウマ、恐怖話の『とうせんぼう』です。これを見たら他の昔ばなしはチョロく感じます。まぁ「吉作落とし」や「飯降山」なんてのもありますが、この「とうせんぼう」は恐ろしいです。因みに第2位は「カンタの枕」で次回はこれを紹介予定です。

とうせんぼうは一時自殺の名所と言われた福井県にある「東尋坊」の由来ともなっています。元々は僧侶の名前です。

日本昔ばなし「とうせんぼう」

このとうせんぼうは日本昔ばなしで特殊です。だいたいオープニングのBGMは決まったものが何種類かあり、それをタイトルに合うものに当てはめて決まっていたのですが、とうせんぼうはほとんど使われないBGMでした。記憶では「るすが岩」あたりが同じBGMを使っていたかもしれません。このるすが岩も後味悪い話ですので、別記事に譲ります。

さてとうせんぼうの内容ですが、まずあるお寺に小坊主がいますが、この小坊主は周りの坊主からいじめられます。愚鈍であったようなのでそれを理由にいじめられるわけですが、それだけでいじめられるのもひどい話です。

ある日とうせんぼうはいじめられないように観音様に強さを求めます。その甲斐あってか翌日とうせんぼうはとてつもない怪力を得るのです。

別の日、とうせんぼうはいじめてきた坊主と相撲を取ります。しかし、強すぎる力を得てしまったせいか、とうせんぼうは対戦相手の坊主を殺してしまうのです。そして周りから迫害を受けることになります。

とうせんぼうは山にこもって逃げますが、坊主たちの追い打ちはひどく、とうせんぼうが食事を作っている鍋に馬の糞を入れるほどです。これには流石にとうせんぼうも激ギレです。それからというもの村を襲っては村人たちを殺しまくります。

昔ばなし版のシリアルキラーがここに誕生しました。
ひとしきり殺したところでとうせんぼうは別の村へと旅立ちます。

しかし村人たちの怒りは収まりません。とうせんぼうを追って、知らないふりをして、酒をふるまいます。とうせんぼうが酒によって寝たところを、縄で縛ります。

ここからが怖いところで・・・・

村人は縄で縛ったとうせんぼうを持ち上げ、
崖から海に投げ捨ててしまいます。

あな恐ろしや。もはや恐怖以外の何物でもないです。トラウマ(虎馬)どころか、シベリアタイガーサラブレット級の恐ろしさです。

それからこのとうせんぼうが投げられた海が恐れられ、この話を元に作られたのが東尋坊になります。

原作

では、このトラウマ昔話「とうせんぼう」の元となった原作(原典・文献)はどうだったのか。調べてみました。

実は「とうせんぼう」には、アニメの直接的な元ネタとなった児童文学と、歴史的なルーツとなった江戸時代の古文書という2つの「原作」が存在します。

1. アニメ『まんが日本昔ばなし』の直接の原作

アニメで放送された岩手県を舞台とするストーリーの直接的な原作書籍は、児童文学者・瀬川拓男氏が編纂した『日本の民話08 乱世に生きる』(角川書店、1973年刊行)に収録されている「とうせん坊」です。

岩手県(旧・陸奥国)の北上川流域に伝わる民話や、民俗学者・佐々木喜善がまとめた『聴聞草紙』などの古い昔話(「島の坊」など)をベースに、物語として再構成されたものがアニメの脚本に採用されました。

2. 最も古い歴史的ルーツ(江戸時代の古典文献)

さらに時代を遡ると、この物語の真の原典と言える江戸時代の地誌や記録に行き着きます。

  • 『吾妻むかし物語』(元禄年間頃・松井道圓 著)
    岩手県花巻の古い記録です。寺にいた「宗元」という悪僧が北陸へ逃れて「とうせん坊」と名乗ったという記述があり、岩手に伝わる伝説の基礎となりました。
  • 『西国盛衰記』(宝永年間頃・馬場信意 著)
    福井県の景勝地「東尋坊」に伝わる悪僧・東尋坊の伝説が記録されている古い古典です。

元々は福井県(越前国)の平泉寺に伝わる「怪力の悪僧・東尋坊が、酒に酔わされて断崖から突き落とされた」という1180年代の僧兵伝説が、旅の座頭や琵琶法師たちによって全国へ流布し、岩手県の地域民話と融合して完成したのが、現在の「とうせんぼう」の原作の正体です。

実は善人だった?もう一つの「東尋坊」伝説

一般的に東尋坊(とうせんぼう)といえば、「暴れまわる悪僧」や「村を襲うシリアルキラー」として語られますが、実は地元・福井県には「東尋坊は本当は善人だった」という正反対の説(異伝)も残されています。

その代表的なものが、福井県福井市(旧岡保村)などに伝わる伝承です。

悪僧たちを咎めた正義の僧「当仁坊(とうじんぼう)」

この異伝では、彼の名前は「東尋坊」ではなく「当仁坊」と表記されます。

当時の平泉寺は巨大な権力と財産を持っていましたが、一部の悪僧たちが寺の財産を私物化し、横暴の限りを尽くしていました。
当仁坊は非常に正義感が強く、そうした悪僧たちの不正や悪事を真っ向から糾弾・厳しく咎めていたのです。

しかし、自分たちの悪事を暴かれて都合の悪くなった悪僧たちは、当仁坊を疎ましく思い始めます。
そこで彼らは裏で密かに結託し、「正義の士である当仁坊を消してしまおう」と策略をめぐらせました。

ハメられた末の罠と「歴史の改ざん」

悪僧たちは「仲直りの酒宴を開こう」と嘘をついて当仁坊を断崖絶壁(現在の東尋坊)へと誘い出します。
警戒を解いて酒を飲み、酔いつぶれて寝込んでしまった当仁坊を、悪僧たちは大勢で取り囲み、そのまま海へと突き落として謀殺してしまいました。

つまりこの説では、「正義を貫いた善人が、汚い悪党たちにハメられて殺された」という胸くそ悪い悲劇ということになります。

さらに恐ろしいのはここからです。
当仁坊を殺害した悪僧たちは、自分たちの殺人を正当化し、世間の批判をかわすために、「あいつは生前、救いようのない悪逆非道な悪僧だった」「殺されて当然の男だった」という嘘の噂を流して歴史を書き換えたと言われているのです。

この善人説が正しいかは定かではありませんが、どっちみち結末は変わりません。

人の怖さが一番のトラウマである

最初に殺人を犯したのはとうせんぼうですが、その後の村人の復讐は度が過ぎています。とうせんぼうは元々いじめられていて、一人殺した後も山でひっそりと暮らしていたので、反省の色を見せていたように見えます。

そのとうせんぼうを追い詰めシリアルキラーに化けさせた村人たちの方こそ恐ろしいです。集団がなす狂気でしょうか。とうせんぼうが海に投げられるシーンは何度見てもトラウマですが、いざ記事に起こしてみると、とうせんぼうにトラウマを感じているのではなく、村人たちにトラウマを感じているんだと改め直しました。

そんなトラウマ級ですが子供向け!?アニメです。
YouTube公式チャンネルで放送されないかなー。ちょっと難しそう(笑)

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